まだ1日目後半だっけ…?
村長さんから聞いた能力者の話の概要はこうだ。
・占い師…1日1人だけ占うことで、人狼か人を見分けることができる。
・霊能者…死者が人狼か人かを見分けることができる。
・共有者…2人1組で、互いが人間であることを知っている。
・狩人…自分以外の人間を守ることができる。
大体こんな感じらしい。村人は、夢にあったとおり、ただの村人だそうだ。
当面、その記述を信用するかどうかは、置いておいて能力者をどうするか…かなぁ?
人狼が、羊を襲った犯人のように、巧妙に人を襲うとしたら…
うーん…名乗り出た人を襲うって事も? そもそも、人狼にとっての脅威を放置はしないか…
考えることが多くて、頭の中が整理しきれてないわ。
話の整理なんかのためにも、一時解散は正解だったかもしれないわね。
私は宿の食堂のテーブルに頬杖をついたまま、辺りを見渡してみた。
解散になったせいだろう、さっきまで、みんな集まっていた食堂も閑散としている。
私は、とりあえず目に付いた人に話しかけてみた。
「ねぇ、レジーナはさっきの話どう思う?」
話しかけた相手は、この宿の女将のレジーナだった。
「どう思うっていうのは、人狼の話を信じるかってことかい? それとも能力者とやらのことかい?」
「んー…どっちもー」
「あたしゃ、どっちも半信半疑ってとこだねぇ、確かに羊を襲ったやり口は獣とは思えないけどさ」
レジーナは、洗った皿を拭きながら、そう答えてくれた。
よどみなく手を動かしながらも、視線はこちらに向けてくれている。
「そっかぁ…私も半信半疑かなぁ…人狼がいると仮定すれば、能力者の話も信憑性が増すんだけど…」
「そうだねぇ、あたしもそれは同感だよ。ま、人狼なんて居ない方が良いって言うのが本音さね」
そう言って、レジーナはカラカラと笑った。
「ま、確かにそうよね」
苦笑しつつ、私はそう答える。
人狼が居なければ、平和なままいられるのだから、居ない方がいいとは私も思う。
ただ、妙にリアルな夢を見たせいだろうか、なんだか不安に感じてしまうのは…
「でも、人狼が居なかった場合、この状況をいつまで続ければいいのかな?」
ふと、思ったことを漏らす私。
「ふむ、そういやそうだねぇ、あたしとしてもあんまり長い間穀潰しに居座られても困るねぇ」
実際には、何の変化もなければ、数日の内に元通りだと思うけれど、確かに宿は大変だわ。
「おいおい、穀潰しってのは俺の事か?」
耳ざとく聞きつけたのか、ディーターが反応してくる。
「ま、あんたもその一人さね」
「にゃ、にゃにおぅ!?」
涼しい顔で言ってのける、レジーナと、猫のような声を出して激昂するディーター。
なんだか、レジーナや村長さんの前だと、妙に子供っぽく見えるわねぇ…
いや、さすがに口に出して言う度胸は無いけれど。
「まぁ、能力者とかが本当だったとして、占いを誰にするかとか決めたほうがいいのかしら」
脱線気味だった話を、目下の私の懸念に持っていく。
「んぁ? そんなの占い師とやら適当に決めれば良いんじゃねぇの? 誰占っても、判定はできるだろ」
それなりに、話はちゃんと聞いてるらしい。ディーターがそう言ってきた。
「そうかしら、何か落とし穴がある気がするのだけれど…」
「まぁ、気になるんならよ、夜にでもそう提案すりゃいいんじゃねぇの?」
「そうだね。なんなら占い師ってのに、名乗り出てもらうってのも手かもしれないよ」
ディーターとレジーナが口々に答えてくれる。
何の気なしに話に乗ってもらったけど、大分やれることが見えてきた気がする。
「ん、そうしてみる。ありがとね」
レジーナは片手をヒラヒラ振り、ディーターは黙って呑みに戻った。
まぁ、まだ夜までは時間があるし「本当だと仮定して」色々考えてみるのも悪くないかもしれない。