1日空いてしまったけれど

「ふぁーあ……ねむいな……寝てていい?」
 起きてきたばかりだというのに、ゲルトは相変わらずだった。
「そう言わんと、ゲルトも参加してくれ」
 ドアを開けつつ、村長さんがそう言った。
「村長さん、おはようございます」
「あぁ、みんなおはよう。全員揃っているようだね」
 ぐるりと見渡して、そんな確認と行う。
「まず、最初にみんなには謝っておかなければならない」
「…?」
 唐突な謝意に、みんな首をかしげる
「実は、このメンバー分けは、作為的なものだ」
 なるほど――やはりと言うべきだろうか、村長さんにはわかっていたのだろうか?
「それは、私も含めて昨晩見た夢に関係していると言う事かしら?」
「夢の内容まではわからんが、おそらくパメラの想像している通りだと思う」
 と、言うことは、昨日の夢は真実で、この中に人狼が3人紛れ込んでいるという事だろうか?
「ただ、私も文献に従っただけで、そこに示されたものが真実かどうかはわからん」
「文献…と言うと?」
 初めて耳にする話だった。確かに人狼に関する御伽噺はあったように記憶しているけれど…
「うむ、村長職に就いたときに預かったものでな。人狼の噂が広がったら見るようにと言われたのだ」
 村長さんは、やや古びた冊子を取り出して、そう言った。あれが件の文献だろう。
「実はここに載っている、テストのようなものを行って、このメンバーを絞ったのだ」
 つまりは…人狼対策マニュアルみたいなものだろうか?
「ふむ、それで、その文献には他にはどのような事が記されているんだ?」
「そうだな、人狼の対抗手段みてぇなのも書いてあんのか?」
 トーマスとディーターが、話の続きをうながす。
「いや、そのような事は書かれていない。能力者と言う物については書かれているが」
 能力者――夢にあった「占い師」などの事だろうか。
「なんでぇ、案外役に立たねぇな」
「うむ、それに私としては、まだ半信半疑と言うところだしな。考えたくないと言うのもあるが」
 まぁ、そりゃそうだろう。同じ村の住人が人狼だったなんて、私も考えたくないし。
「そういえば、旅人さんや商人さんは、人狼の話とか知らないの?」
 文献の話への興味がそがれたのか、ヨアヒムが別の人物に話を振る。
「私は、御伽噺程度の話しか聞いたことがないなぁ」
「僕は噂くらいは聞きましたよ。実際に関わることになったのは、初めてですけど…」
 あまり、いい噂ではなかったのだろう、商人さんは少し不安そうな面持ちだった。
 まぁ、とりあえず、能力者とやらの話を聞いて――
「とりあえず、能力者というものの話を聞かせていただいて、一度解散と言うのはどうでしょう?」
 私が言おうと思っていたことを、神父さんが代弁してくれた。
「子供たちも、随分と退屈しているようですし、用事のある方もいらっしゃるでしょう」
 神父さんは、子供たちに視線をやって、少し肩をすくめてそういった。
「うむ、そうだな、能力者の事について話そう…まず"占い師"だが――」