旅立ち

なんとなく…本当になんとなく。
「うわぁ〜」


 目線が変わる…とは陳腐だがよく言ったものだと思う。
 見慣れた街の光景、それが立場が変わっただけでこんなに違って見えるのか。


「これが…私の冒険の舞台フィールド


 私は今日、初心者修練場を出たばかりの冒険者見習い。
 本来なら適正に基づいて街に転送してもらうのだけど、私はわざわざここにしてもらった。
 ここは、ルーンミッドカッツ王国の首都プロンテラ、私の故郷だ。
 黙って家を出てきたも同然だったから、冒険者になった報告を両親にしたいと思って、ここに戻ってきたのだ。


「父さん、母さんたっだいま〜」
「セルフィ、おまえ一体どこに…その姿は…?」
「えへへ、私、冒険者になるって決めたの!」


 ぽかーん、と呆けたような表情を浮かべる両親。
 何かをごまかすような乾いた笑いを浮かべる私。


「決めたって…やれやれ、どこに行ってるのかと思ったら……」
「あは、冒険者適正試験を受けに行ってたの!」
「ほんっと、いつもあなたは自分勝手なんだから……」
「まぁ、無茶できるのも若いうちだけだ、好きにすればいい、しかし、泣きついてきても知らないからな?」
「だいじょーぶ! 私だってちゃんとやれるんだから!」


 元から私を良く知っている両親だ、あっさりと送り出してくれた。
 とはいえ、本人たちも言っていたとおり、これからは親を頼るわけにはいかないわけだ。
 まぁ、冒険者なんてこの街だけでもたくさんいるわけだし、きっと大丈夫!


「とにかく、フェイまでいかないとなぁ…」


 弓手志望の私は本来ならアーチャー試験の行われる山岳都市フェイヨンに行くべきなのだ。
 けど、両親に挨拶しておきたくて、プロに行ったから歩いていかないといけない。
 歩き以外の方法は、何かとお金がかかるから、今の私にはつらい。
 ただ、フェイまでの道のりは結構あるし、危険なモンスターもいるかもしれない。
 道中で修練を積むか、ある程度修練を積んでから向かうべきか悩みどころだ。


「あれ? ひょっとしてセルフィちゃん?」


 道の端で立ち止まって悩む私に声をかける人がいた。
 声のするほうに振り返るとそこには……


つづく…かも