なんとなく、書いてみる。

人狼BBSでのあるできごとを一部だけ抜き出して書いてみる。
D369村という村での出来事…




 ボクは「それ」を遠くから眺めていた。
 …"彼女"は泣いていた。ボクは"彼女"が泣いているのを初めて見た気がする。
 当然かもしれない、誰だって死ぬのは怖いもの…
 恋人が見ている前なのだから尚更かもしれない。


 …"彼女"が"彼"に何かを言っている。とてもつらそうな顔で…
 "彼"は、それをうつむいたまま聞いていた。
 だけど…突然、顔を上げたかと思うと、激しくかぶりを振った。
 何かを拒絶しているみたいだった。
 "彼女"は、泣き笑いの表情で"彼"に何かを伝えようとしている。
 まるで駄々っ子のようにかぶりを振っていた"彼"が静かにうなだれる。


 他の大人が"彼"に小さな短剣を手渡した。
 "彼"はその小さな凶器をぼんやりと眺めている。
 自分の恋人を永遠に失わせる小さな凶器…"彼"の瞳から零れる滴が小さな刃を濡らす。
 "彼女"はもう泣いていなかった。柔らかな笑みを浮かべて恋人を見ている。
 "彼"はそんな"彼女"を見てはいなかった。ひょっとしたら見たくなかったのかもしれない。
 それでも、"彼"は顔を上げて"彼女"の胸元に刃を寄せた。
 まだ、迷いはあっても"彼"なりに覚悟したようだった。


 震える手、震える刃。小さな刃の先がゆっくりと"彼女"の胸に吸い込まれていく。
 迷うように、躊躇うようにゆっくりと刃が進む。
 自殺の時の「躊躇い傷」に似ているのかもしれない。
 早く楽にしてあげたいはずなのに、そうしたくないという相反する気持ち。
 その気持ちが生み出すジレンマの証…
 "彼女"が微笑んだまま、一筋の涙を零し小さく囁く。
 "彼"はハッと顔を上げ、"彼女"の顔を見つめる。
 弛緩していく"彼女"の体。強く抱きしめる"彼"


 誰も居なくなった頃、動かなくなった"彼女"を信じられないような瞳で見つめる"彼"
 …だけど、きっと"彼"は明日もっと信じられないものを「視る」ことになる。
 そのことを考えて、とても悲しいはずなのにボクは薄く笑った。




なぜか、妙にブラックな話になってしまった…